近頃はやっと秋らしい陽気となり、ようやく紅葉シーズンが到来となりました!今年は全国的にはやや遅い見頃時期が予想されており、関東地方では11月中旬ごろが見頃とのことです。紅葉を見逃さず、短い秋を存分に楽しんでいきたいですね。
今回は生でも加熱しても美味しく、全国各地に地域野菜が存在する『カブ』についてご紹介します。
カブは元々野生のアブラナ(菜の花)の変種で、紀元前からヨーロッパで栽培されていました。原産地は、地中海沿岸の南ヨーロッパやアフガニスタンなどの中央アジアであると言われています。
中国や朝鮮から日本へ渡来した時期は定かではありませんが、奈良時代には既に食用とされており、最も栽培の歴史が古い野菜のひとつと言えます。春の七草にも「すずしろ(ダイコン)」と共に、「すずな」で親しまれ、貴重な根菜であるとされてきました(※1)。
日本全国での栽培としては、平成30年時点で総出荷量は9万7900t。そのうち千葉県が最もカブを栽培しており、3万2700t(シェア約33%)、次いで埼玉県で1万4500t(シェア約14%)、青森県で6050t(シェア約6%)の順となっています(※2)。
江戸時代には全国各地でさまざまな品種のカブが栽培されるようになり、現在もこれらの多くが地域野菜として親しまれています。分類としては、ヨーロッパを経由して伝わった「西洋型」と中国を経由した「日本型」に大きく分けられ、愛知~岐阜~福井を結ぶ通称「かぶらライン」から西は「日本型」、東は「西洋型」の品種が多いとされています(※3)。
球形の白いカブが最もなじみ深いですが、北海道や東北、日本海側に多いのが『色カブ』です。北前船によって運ばれた北海道の大野紅カブや青森県の伝統野菜である筒井紅カブ、山形の温海カブ、飛騨高山の特産品である飛騨紅カブ、福島の館岩カブ等があげられます。
また、その他にも千枚漬けで有名な京都の聖護院カブ、かぶらずしに使用される石川の金沢青カブ、小型のダイコン状で細長い島根の津田カブや滋賀県の日野菜(ひのな)カブなど、形・色・大きさの異なる地方色豊かな品種が実に多く栽培されています(※1)。
そこで今回のデータ比較では、『色カブ』ごとに中身成分の比較してみました!最も親しまれている白色のカブや、あやめ雪や木曾むらさきカブといった皮の表面が紫色のカブ、もものすけカブや紅カブなど赤色のカブ、そして味こがねという黄色のカブ、この4色のカブで比較してみました。
どのグラフにおいても「カブ(黄)」が最も高い数値を示しました!
また抗酸化力(植物ストレス耐性力)、ビタミンC含量についてはどちらもきれいな右肩上がりのグラフとなり、白色のカブよりも色カブの方が高い傾向にありました。
色カブそれぞれの色付き具合から考えてみると、「カブ(紫)」は皮の表面のみに着色、一方「カブ(赤)」は皮にはしっかり色がついていますが、中身は薄く着色しています。「カブ(黄)」に関しては皮も中身もしっかりと色がついています。このように色カブもそれぞれの着色度合いで数値に差が出ている可能性も考えられます。
今回の青果ボックスには黄色のカブが入っていますので、いつもと違うカブのおいしさを是非堪能してみてください。
カブの根の部分は、ダイコンとよく似た栄養素構成で、カリウム、ビタミンC、食物繊維など。また消化を助ける働きを持つアスターゼ(でんぷん分解酵素)を含みます。この酵素は加熱に弱いので、サラダなど生で食べていただくと効果的です(※4)。さらに、辛味成分(アリルイソチオシアネート)は食欲増進や消化促進、血栓予防の効果が期待できます(※5)。
一方、葉にはビタミンCやβ-カロテンなど強い抗酸化作用をもつので、捨てずに一緒に食べていただくのがおすすめです。
生でも加熱しても美味しい、歴史が詰まった伝統野菜「カブ」。是非と積極的に、ご家庭でも食べてみてはいかがでしょうか。
青果日和では、これからも青果ボックスにはいっている野菜や果物の情報を、データと共にご紹介していきます。
参照
※1 技術と普及 続 野菜の機能性 第10回 カブ
※2 農林水産省「野菜生産出荷統計(平成30年産)」
※3 独立行政法人 農畜産業復興機構 かぶの需給動向 調査情報部(https://www.alic.go.jp/content/001172224.pdf)
※4 旬の野菜の栄養辞典(監修 吉田企世子)冬に野菜 かぶ
※5 色の野菜の栄養辞典(監修 吉田企世子)白の野菜 かぶ