寒気が日本列島に南下しており、全国的に一気に冬らしい気候になってきました。体調を崩さないように、しっかりと体を温めて過ごしていきましょう。
今回は調理でさらに美味しく、栄養価もアップ!?『ニンジン』についてご紹介します。
ニンジンは中央アジアのアフガニスタンを原産とするセリ科の野菜です。元々は根が枝分かれした刺激の強い植物で、薬用として栽培されていました。中国を経て東方に伝わった東洋ニンジンは、現在日本で主に流通されている品種になります。日本へは江戸時代に伝わりましたが、食卓に登場するようになったのは明治になってから、と言われています(※1)。
ニンジンは一年を通して需要が高く、生産量が多い野菜の一つです。春夏ニンジン(4~7月)、秋ニンジン(8~10月)、冬ニンジン(11~3月)のように、収穫時期によって分けられています(※2)。
日本全国での栽培では、令和3年時点で総収穫量は63万5500t。そのうち1位が北海道で20.2万t(シェア約32%)、次いで2位が千葉県で11.2万t(シェア約18%)、3位が徳島県で5.0t(シェア約8%)の順となっています(※2)。
今が旬の冬ニンジンは、収穫時期別でみると最も栽培期間が長いため、日本で一番収穫されているニンジンとも言えます。収穫量全体が25.2tに対し、1位が千葉県で8.8t、2位が茨城県で2.2t、3位が長崎県で2.1tとなっています(※3)。これから店頭に並ぶ産地の半分量に当たりますので、ぜひチェックしてみて下さい。
寒い季節となると、シチューやお鍋、お正月には煮物など、冬場は特にニンジンが欠かせない時期ですよね!
そこで今回の科学分析データの比較では、調理前(生)のニンジンと、調理後(オイル蒸し)のニンジンの中身成分の数値に変化があるのかを見ていきたいと思います。
まずは調理後のオイル蒸しニンジンが、調理前の生ニンジンに比べ全体的に数値が高くなっており、Brix糖度は約1.2倍、ビタミンC含量については約1.4倍、抗酸化力(植物ストレス耐性力)関しては、なんと約2倍となりました!
オイル蒸しニンジンと生ニンジンの違いは、蒸しによる「加熱」に加えて「オイル」のトッピングです。ブロッコリーでの同様な試験においても、生と複数の加熱調理(蒸し、電子レンジ、茹で)したブロッコリーの抗酸化力(植物ストレス耐性力)を比較したところ、どの加熱調理法でも生より値が高くなりました。このことから、加熱することで特に抗酸化力(植物ストレス耐性力)の値が高くなったかもしれません。
また、ニンジンの特徴といえば、何と言ってもβカロテンを多く含む点です。βカロテンはカボチャやホウレンソウなどにも含まれていますが、約7mg/100g(※4)の含有量は群を抜いており、ニンジンは緑黄色野菜の王様と言われるほどです。
βカロテンの機能性としては、紫外線刺激から肌を保護するのを助ける働きがあることが報告されています(※5)。また、脂溶性成分であるため、油と調理するとβカロテンの吸収率が向上しますので、先ほどのオイル蒸しもしかり、油いためや揚げ物などが吸収性向上に効果的な調理法となります。
この冬は体調を整えるためにも、油で調理したニンジンを積極的に召し上がってみてはいかがでしょうか。
RAKUSAIでは、これからも青果ボックスにはいっている野菜や果物の情報を、データと共にご紹介していきます。
参照
※1 技術と普及 農産物の機能性 第44回 ニンジン
※2 東北農政局 にんじん(https://www.maff.go.jp/tohoku/monosiritai/syokutaku/ninjin.html)
※3 農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)確報 令和3年産野菜生産出荷統計」
※4 食品基準成分表2020年版(八訂)
※5 機能性表示食品の届出情報検索「ベータカロテン」より