4月に入り、気温も暖かくなり新年度・新学期が始まりました!気持ちを新たに忙しい日々を過ごしている方も多いと思いますが、体調に気を付けながら、短い貴重な春の季節を大切に過ごしていきたいですね。
今回は、日本人が古くから愛す根菜『ゴボウ』についてご紹介します。
キク科ゴボウ属のゴボウの原産地は、中国東北部からヨーロッパにかけたユーラシア大陸北部と言われています(※1)。日本には縄文時代に伝来したと言われ、江戸時代には食用として広く普及されるまでは薬用として用いられていました(※2)。
これまで中国や欧米では薬用としての使用が主で、ゴボウを野菜として食用で用いるのは日本だけでしたが、昨今では日本向けのゴボウを生産したり、中国や台湾でも健康に良いということで食べられるようになりました(※1)。
また、ゴボウの種類は大きく分けると2つに分けられ、関東では耕土が深く水はけが良いため根が細く長い長根種が多く、関西では耕土があまり深くないため、根が太くて短い短根種が普及していると言われています(※1)。
ごぼうの有名な品種をご紹介します。
・滝野川群(たきのがわぐん)(※3):
直径3cm前後、長さは1mにもなる長根種の代表品種で、江戸初期から滝野川(現、東京都北区)付近で栽培されたのが名前の由来とされています。長根種の基本種として選抜・改良され「柳川理想」、「常豊」、「山田早生」など多くの品種に分化しました。
・大浦群(おおうらぐん)(※3):
直径10㎝以上、長さ60~100㎝近くにもなる日本一の太さを持つ巨大な短根種で、大きいものは4kgにもなる品種です。
・堀川ごぼう(※3,4):
京都の堀川で栽培が始まった伝統野菜のひとつで、滝野川ごぼうを越冬させて太くした品種となり、長さ50㎝、直径6~9センチ前後になります。栽培家庭で一度掘り起こしてから、再び植え付け、土中で1年以上かけて育てるという手間のかかる特殊な栽培法で知られています。
・サラダごぼう(※3):
ゴボウは従来火を通す料理に使われてきましたが、最近ではゆでた後にサラダにして利用されることも多くなり、それに適した品種としてサラダ用のゴボウが開発されています。
・新ごぼう(※3):
トンネルで霜を除けながら栽培し、12月から初夏まで出回る直径1.5㎝前後の若摂りしたゴボウで、軟らかく、香りも良く、サラダやきんぴらのほか、どじょうを使った柳川鍋には欠かせない食材です。
一般的に流通している細長い滝野川群のゴボウ以外にも、様々なゴボウがあることがお分かりいただけたかと思います。品種によって長細かったり、短く太かったり、または軟らかかったりと、それぞれに特徴をもつゴボウですが、品種によって栄養成分には違いはあるのでしょうか。
そこで、今回はグループ会社(デザイナーフーズ(株))が保有するデータベースから、長根種である滝野川群の代表品種「柳川理想」と、短根種の「大浦群」、またサラダに適した「サラダごぼう」、若摂り収穫される「新ごぼう」の「Brix糖度」と「抗酸化力(植物ストレス耐性力)」の数値を比較してみました。
グラフは「柳川理想」の数値を100としたときの相対値で表しています。
Brix糖度は、柳川理想に比べ、大浦群は約3割、サラダごぼうについては約2割高い傾向が見られ、新ゴボウにおいては約1割低い傾向となりました。
抗酸化力(植物ストレス耐性力)については、柳川理想に比べ、大浦群が約2割高く、サラダごぼうは約5割、新ごぼうでは約6割低い値となりました。
ゴボウにはポリフェノールの一種である水溶性のクロロゲン酸関連の化合物が含まれており、抗酸化力作用、血糖値上昇の抑制、抗がん作用の働きがあると言われています(※4)。このクロロゲン酸はアクに含まれる成分の1つ(※4)と言われているので、サラダ向きであるサラダごぼうや新ごぼうがアクの少ない品種だと考えると、クロロゲン酸含有量が少なく、柳川理想よりも抗酸化力(植物ストレス耐性力)の数値が低くなったと考えられます。またアクを抜きすぎてしまうと抗酸化力(植物ストレス耐性力)の数値も低くなるため、長時間水につけることは避けた方がよさそうです。
また、ゴボウのもう一つの栄養的な特徴と言えば食物繊維。100g中5.7g(※5)と野菜の中ではトップクラスに含まれています。
野菜に含まれる食物繊維は、その多くが水に溶けない不溶性に偏っていますが、ゴボウは不溶性と水溶性の食物繊維をともに多く含んでいる点が特徴です。
水溶性食物繊維の働きとしては、血糖値の上昇を抑えたり、コレステロールを吸収して体外に排出する作用があるとされ、この働きにより糖尿病をはじめとする生活習慣病全般の予防に効果があると言われています(※6)。
栄養成分をしっかりと摂るなら洗いゴボウよりも土付きの方が鮮度が保たれるのでお勧めです。日本で親しまれてきたゴボウ。ぜひ今年は積極的に食べてみてはいかがでしょうか。
RAKUSAIでは、これからも青果ボックスにはいっている野菜や果物の情報を、データと共にご紹介していきます。
参照
※1 独立行政法人 農畜産業振興機構 ごぼうの需要動向(https://www.alic.go.jp/content/001231723.pdf)
※2 技術と普及 農産物の機能性 第17回 ゴボウ
※3 独立行政法人 農畜産業振興機構 月報 野菜情報 今月の野菜2009年1月(https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/0901_yasai1.html)
※4 日本調理科学会誌(J.Cookery Sci.Jpn.)Vol.52,No.1,16~21(2019)ごぼう中のポリフェノールとミネラル量に与える調理操作の影響(https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/52/1/52_16/_pdf)
※5 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
※6 色の野菜の栄養辞典(監修 吉田企世子)ごぼう