滋養強壮の源となる硫化アリルが豊富な健康野菜【行者菜】

皆さんこんにちは!
梅雨明け前の6月下旬は、雨の日と真夏日が交互に訪れる不安定な時期です。湿度が高く蒸し暑いうえ、気温も30℃を超える日が増えるため、疲れがたまってくる方も多いのではないでしょうか。意識的に美味しい栄養バランスのとれた食事を摂って、体調管理に努めましょう!

そこで今回は、夏バテ防止にぴったり!【行者菜(ぎょうじゃな)】についてご紹介します。

行者菜は、強壮特殊山菜として希少価値の高い「行者ニンニク」を手軽に食べることができるように開発された野菜で、同じヒガンバナ科ネギ属の「行者ニンニク」と「ニラ」を交配することで誕生しました。

栄養価が高く、収穫時期が長いのが特徴で、出荷時期は5月~9月頃になります(※1)。また、見た目は、「ニラ」とそっくりですが、根元部分にはニンニクの風味があります。強い香りにより害虫がつきにくいため、ほぼ無農薬で栽培できる他、収穫後も日持ちがよく、冷蔵状態で1週間から10日ほど保存ができます(※2)。

行者菜の栽培は平成18年、山形県長井市の生産者が、宇都宮大学の行者菜開発グループの話を偶然聞き興味を持ったことがきっかけで、全国に先駆けて始まりました(※2)。現在は、1道5県(北海道、青森、岩手、秋田、宮城、山形)で栽培されています(※1)。

今回の青果ボックスでは、このめずらしい行者菜が入っていますので、炒め物やおひたしなどで是非ご賞味ください。

では、次に行者菜の栄養価について注目してみましょう!
行者菜には、タマネギやニンニクなどの植物に含まれる硫化アリルが多く含まれています(※2)。この硫化アリルは、すったり切ったりすると、硫化アリルの仲間であるアリインが酵素の働きでアリシンに変わり、ツンとした特有の匂いと辛味の素となる成分で、抗酸化、抗菌、殺菌作用に優れています(※3)。

また、ビタミンB1の吸収を高める働きがあるので、糖の代謝を円滑にして、疲労回復やスタミナ強化にも役立ちます(※3)。そしてこの行者菜には、交配元となる「行者ニンニク」、「ニラ」よりも多い硫化アリルが含まれているという研究結果が出ており(※4)、「行者ニンニク」と「ニラ」から更にパワーアップした野菜であることが伺えます。

では、実際に行者菜と、交配元である「行者ニンニク」と「ニラ」の3種類を栄養成分で比較をしたとき、どのような傾向が見られるでしょうか?今回はグループ会社(デザイナーフーズ(株))のデータからBrix糖度、ビタミンC、抗酸化力(植物ストレス耐性力)を比較してみました。

行者菜、行者ニンニク、ニラのBrix糖度、ビタミンC、抗酸化力(植物ストレス耐性力)を比較したグラフ

まず、「行者ニンニク」は、行者菜、「ニラ」と比べて、Brix糖度については約2倍、ビタミンC含量においては約1.4~2.1倍と、高い値となりました。
Brix糖度に関与する糖分は、葉の葉緑体による光合成によって生成され、またその糖分からビタミンCが生成されます。この3つの野菜は、同じネギ属の野菜になりますが、行者菜やニラは細長い葉の形状に対し、「行者ニンニク」の葉は長い楕円型の形状であるため、光合成の効率の差により、数値に差が出たのかもしれません。

また抗酸化力(植物ストレス耐性力)については、約1.1倍と行者菜が最も高い傾向になりました。

この結果の要因の一つとして、硫化アリル含有量の差による影響が考えられます。
前述した通り、3つの野菜の中で行者菜が最も硫化アリルが多く含まれていることをご紹介しました。硫化アリルは水溶性(※5)ですので、抗酸化力(植物ストレス耐性力)に寄与する成分になるため、最も硫化アリルが多いとされる行者菜が高くなったと示唆されます。

行者菜はまだ流通が少ないため、スーパーではなかなか見かけませんが、ネット販売で購入ができます。「ニラ」よりも歯ごたえがある食感、そして「行者ニンニク」に近い味と香りを楽しめる良い所取りの野菜です。
夏バテ防止にもなる行者菜、この夏機会があれば是非とも試してみてはいかがでしょうか。

RAKUSAIでは、これからも青果ボックスにはいっている野菜や果物の情報を、データと共にご紹介していきます。

参照
※1 ながい食育通信vol.3 https://www.city.nagai.yamagata.jp/soshiki/nourin/106/206/1/14717.html
※2 【まめ知識】滋養強壮の源となる硫化アリルが豊富な「行者菜」 https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_001011.html
※3 旬の野菜の栄養事典P81,157,222
※4 山形県長井市行者菜生産グループ http://gyojana.com/whats/
※5 たまねぎ-月報 野菜情報-今月の野菜-2009年7月 https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/yasai/0907_yasai1.html