だんだんと秋の陽気となり、スーパーの店頭などでは秋の食材が多く陳列されるようになりました!
今回は秋の食材の中でも、「秋ナス」についてご紹介します。
ナスはインド東部を原産地とするナス科ナス族の一年草です。熱帯地方では多年生植物となり、世界各地で大きさ、色、使用用途などにより様々な品種が栽培されています(※1)。
以前に掲載しました青果ラボ(2022年6月)では、ナスの品種などについてご紹介していますので、こちらもぜひチェックしてみてください!
→ 紫、緑、白、夏に艶めく歴史の深い野菜【ナス】
ナスの歴史は古く、日本へは中国を経て8世紀ごろに伝わったと言われています。東大寺正倉院にナスを献上したという記録があることから、奈良時代には既に栽培されていたそうです(※2)。
ナスの生育温度は20~30度と高く、夏の代表的な野菜ですが、現在では施設栽培の普及などにより周年供給されています。出荷時期により、冬春ナス(12月~翌6月)と夏秋ナス(7~11月)と区分され、冬春なすは高知県や熊本県などの温暖な地域で施設栽培によって生産されます。また、夏秋ナスは群馬県や茨城県、栃木県などで主に露地栽培により生産されます(※3)。
『秋ナス』とは、品種などではなく、9月以降の時期に収穫されるナスのことを指します。有名なことわざである「秋ナスは嫁に食わすな」の由来には諸説ありますが、なかでも「怠け者の嫁には美味しい秋ナスを食わせるな」、「秋ナスは美味しいけれど、大事な嫁の身体を冷やしてしまうのは良くない」という、相反する2つの説が有名です。
どちらの説にも「美味しい秋ナス」というワードがありますが、夏の暑い日差しを浴びて成長する「夏ナス」は皮が厚く実が詰まったものになる一方で、朝夕の寒暖差が大きく日差しも比較的穏やかな時期に成長する「秋ナス」は皮が柔らかく、瑞々しい果肉で、甘味と旨味がのったナスになると言われています。
では、本当に秋ナスは美味しいのでしょうか。
そこで、今回のデータ比較ではグループ会社(デザイナーフーズ(株))のデータから周年のナスの中身成分を比較してみましょう。
Brix糖度については周年で4~5%の間にて季節で増減が見られ、抗酸化力(植物ストレス耐性力)についてもBrix糖度と同様に、7~9月の夏ナスに比べ、10~11月の秋ナスは高く、また周年の中でも高い傾向にあることがわかりました。
皮が薄く、瑞々しい秋ナスが、夏ナスよりおいしく感じるのは、このBrix糖度や抗酸化力(植物ストレス耐性力)の差からも言えるかもしれません。
一見すると、夏の日差しをたっぷり浴びた夏ナスの方が、抗酸化力(植物ストレス耐性力)が高くなり、他の中身成分も高くなるのではと、予想していたのですが、意外な結果となりました!暑い夏よりも、比較的過ごしやすく、寒暖差のある秋の気候の方がナスにとっては美味しく育ちやすい環境なのかもしれませんね。
ナスは血行の促進や、利尿作用に優れており、体を冷やす野菜と言われています(※3)ので、食べすぎには注意ですが、今しか食べられない美味しい秋ナスを是非とも楽しんでみてはいかがでしょうか。
RAKUSAIでは、これからも青果ボックスにはいっている野菜や果物の情報を、データと共にご紹介していきます。
参照
※1 2022年7月号(ナス)技術と普及「農産物の機能性 第86回」
※2 独立行政法人 農畜産業振興機構 なすの需要動向(https://www.alic.go.jp/content/001206091.pdf)
※3 旬の野菜の栄養辞典(監修 女子栄養大学名誉教授 吉田企世子)